会社を設立し、法人としての活動が活発になってくると人を新たに採用する機会や給与の支払いが増えてくることなどがあるかと思います。今回はそのような場合に、税金や助成金などの優遇措置の活用が見込める「所得拡大促進税制」及び「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」について見ていきたい思います。
目次
1.所得拡大促進税制
適用する年度とその前の年の2年間継続して給与を支給し増加した場合に、法人税の一部が軽減されるというものです。具体的な内容は下記のとおりです。
①青色申告で昨年と比較して支払う給与が1.5%以上増加した場合に、
②増加した給与総額の15%(法人税の20%が上限)を支払う法人税からマイナス
できる可能性があるというものです。特別な手続きは必要なく、税務申告による申告にてこの優遇措置をご活用いただけます。
※投稿時点では、平成30年4月1日~平成33年3月31日までに事業が開始する各年度が対象となります。
※資本金が1億円以下の法人の場合を想定しています。以下同じように想定しています。
※①の給与は役員報酬やその家族など身内以外の方へ支給した給与のうち、適用年度とその前年の2年間継続して支給した国内雇用者で、その期間雇用保険に加入している方へ支給した給与です。
※②の給与総額は役員報酬や身内以外の方へ支給した給与等の総額です。
※さらに細かい要件(教育訓練費の増加等)を満たすと増加した給与総額の15%から+10%の上乗せができる場合があります。
2.キャリアアップ助成金(正社員化コース)
契約社員、派遣社員、アルバイトなどの正社員以外の方を正社員とした際に、1人当たり57万円が支給される可能性がある助成金です。詳細は以下のとおりです。
①キャリアアップ計画書を作成し、ハローワーク・労働局に提出(正社員になる前までに)、確認印をもらいます。
②就業規則届を作成し、所轄の労基署に(正社員になる前までに)届出を行います。
③契約社員などとして6ヶ月以上勤務した方を、その後正社員として無期雇用契約を締結し、基本給が5%増えた場合に助成されます。
※キャリアアップ計画書は、厚生労働省のHPからダウンロードできます。
※就業規則に正社員に転換する規定があることが条件となりますので、その規定がない場合は追加します。
※働いている正社員の方が社会保険に加入し、労働保険の滞納がないことが前提となります。
※通算雇用期間が3年未満の契約社員などから正社員に転換し、社会保険に加入する必要があります。
※助成金の申請の際にはタイムカード、賃金台帳が必要となります。
※さらに細かい要件(生産性の向上)を満たすと+15万円上乗せされます。
3.まとめ
人件費が増加した場合に支払う法人税が軽減されるものや、アルバイトの方などを正社員にした際に助成される優遇措置の概要を見てきました。
2年間継続して雇用保険に加入している方(役員やその親族等を除く)の給与総額が増加した場合や、半年以上の期間、契約社員やアルバイトとして働いていた方を正社員とする場合にはこれらの優遇措置を受けることができる可能性があります。
これらの優遇措置は活用しやすいものとなっていますので、その際は税務署、ハローワーク、専門家などにご相談いただくとスムーズに進められるんではないかと思います。